発掘って何するの?

 知り合いにエジプトで発掘してきたと言うと、ほとんどの人が「掘ってたの?」と聞いてくる。 まあ間違ってはいないんだけど、それではまるで肉体労働してたと思われそうなので、ここはひとつ、現場でどんなことをしてきたのかを詳しく話そうと思います。
 現場では100人近い(と思う)のエジプト人人夫が雇われている。 彼らはケナという所(ルクソールの近く、トウールから車で1日はかかる) からはるばる出稼ぎで来ている。上エジプトには、このように村単位で発掘の出稼ぎをしている集団がいくつかあるらしい。その人夫たちの中にも ランクがあって、親方、熟練人夫、日本人付、土運びといったふうに分かれている。
 実際にシャベルみたいな道具を使って「掘る」のは熟練人夫たちである。 遺物や遺構を傷つけずに正確に掘るために、技術をもった熟練人夫に 掘らせるのである。しかし、最近熟練人夫の高齢化が進んでいるらしく、 シワシワのおじいちゃんばっかりだった。とっても元気だったけど。


ずがいこつ出土状況とたそがれる熟練人夫

 そして、掘って邪魔になった砂をゴム製の黒いバケツに入れて、 遺跡の外までかついでいくのが土運び。大多数の人夫がこれをやっている。 砂は重いし、それをかついで行ったり来たりするのでかなり重労働そう。 と、いうわけで肉体労働はエジプト人たちにおまかせしていたのです。


砂運びの人夫たち

 じゃあ日本人は何をしてるのかって?ここからが本題です。まず、隊長とか、えらい人(学生以外)が掘る場所を指定する。そこを熟練人夫が掘って、 遺物が出てくると、いよいよ私たち学生の出番遺物班モデリング班に分かれて、 遺物班の人は遺物台帳を持って遺物の所に行き、モデリング班の人はトランジットという機械の所にいく。遺物班は遺物を1つ1つビニール袋に入れ、 荷札で番号をつけ、遺物台帳に記入する。そしてモデリング班とトランシーバーで連絡をとりつつ、遺物の位置をトランジットで読み取ってもらう。
 トランジットというのは、あるポイントの位置を正確に測ってくれる優れもので、 壁などの遺構のラインをとるのにも使われる。つまり、私が現場でやっていたことは、 遺物の取り上げトランジットなのです。あとは、レベル(望遠鏡みたいなもの) とスタッフ(巨大定規)を使って標高を出したりとか。そんなにキツそうじゃないでしょ。
 だからといって楽だったわけではありません。現場では座っちゃいけないから、 作業中は暑い中ずっと立ちっぱなしだし。暑いとはいっても風が結構強いから、 長袖のシャツでも我慢できるくらい。砂が目に入るとブルーになるけど。 あと、うちら学生は下っぱだから「**持ってきてー」と言われたら走らなくちゃいけないし。
 掘っても遺物が出ないときはヒマになっちゃうんだけど、 とりあえず現場はいるだけでも楽しい。
まわりを見回すとエメラルドグリーンの海と果てしない砂漠、 色とりどりのガラベーヤ(民族衣装、綿のワンピース)とターバンを身につけた人夫たちの働く姿。そういうのを見ていれば全然飽きない。
 こうして現場での作業は朝6時から午後1時頃まで行われます。 午後は、室内作業のみ。その日に現場で出土した遺物を整理して、 さらに細かく分類していきます。室内はクーラー効いてるし、 椅子にも座れるのでとっても楽。でも現場作業あってこその室内作業です。 現場は大事!!




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送